No.3 『快適さのキープは、支援の質のキープ』
最近、繰り返し虫歯が出来て歯医者に通ったという話を聞かなくなったと思いませんか。だからといって、虫歯や歯周病が無くなった訳ではありませんよね。そもそも、正しいケアが出来ていなければ、口腔内の虫歯や歯周病に限らず健康上のトラブルに繋がり、病気を招いてしまうものです。セルフケアが出来ず、自らの口の中の変調や症状をうまく説明できない方は特に、その人を取り巻く人達が十分気に掛け、手を掛けて口腔内の環境を整えていく必要があります。光陽荘での口腔ケアへの取り組み、支援の様子を3回に分けて紹介する最終回です。
口腔内のコンディションを整え保つためには、専門職の定期的なチェックやアセスメント(把握をする)、ケアを行うのみで足りるはずもなく、日々のケアや習慣がとても大切になってきます。その為に、専門的に行っている歯科衛生士による記録をケアワーカーが目にする事が出来る情報の共有を大切にしています。
パソコン上や紙面上での確認に留まらず、ケアの際に目にしやすい様に工夫しています。コップに書かれたその人ごとの情報、そして日付けが大切なメッセージであり、日々の情報交換・チェックとなります。日付けは、その情報がいつのモノか、いつからその状態か、経過の日数によって状態の変化などのチェックなどに活きてきます。
また、その表記の仕方においても、それがどの歯なのか、どんな状態なのか、どんなケア(磨き方など)がポイントなのかが、伝わる様に書き示しています。日々のケアの積み重ねと同時に、状態やケアの在り方のチェックにもなっており、より良い『次のステップのケア』に繋がる。まさにPDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のプロセスを繰り返すこと)がなされていると言えます。
現に数年前に見ていた口腔内の状態が、明らかに改善されている方が多数おり、嫌がっていた歯みがきを穏やかな時間として受け入れて、ケアの際に身をゆだねている姿は、年月を重ねた行為(歯みがき)を通じて信頼関係が構築されていると言えます。
それは日々のケアの際に、チームとしてケアに統一性が保たれているからと私たちは考えます。歯みがきは『ケアの質をその場では問われない』という側面があります。どんなケアをなされたかが、1日3回の歯みがきの度にチェックできるものではなく、他者には見えない部分(形が残り難い)のケアとなります。見逃してしまいがち、とは言いたくありませんが、疎かになりがちなのは、自身の暮らしの中でも振り返れば思いを重ねる事が出来るかと思います。
さて、光陽荘では、利用者へのケアをする中で、一連のパターン化されてきた『歯みがき/口腔ケア』の流れは、長い年月と関り・取り組み続けてきたことによって、その方にとって予測が出来る行動となり、それは安心出来る時間となっています。振り返ってみれば、過去に行っていた歯みがきというケアは、支援者側が感じる行為の『必要性』の意味合いが強すぎて、歯みがきを強要(今、きちんとやらなければならないという支援者側の思い)して『嫌な時間、つらい歯みがき』となってしまっていたのかもしれない。
歯みがきの印象・イメージを改める為の取り組みは10年を越える年月を重ねてきました。今現在、口腔ケアで関わるときに、笑顔を見せてくれる方が増えました。しかし、新しく関わる方は新たに関わり方を模索して積み重ねを要する方もいますし、現在も口腔ケアに時間や多くの配慮を必要とする方がいるのも光陽荘の素顔・現状であります。
しかし、『嫌』という意思表示のままで良しとしてはおけない。私たちがその方のことを理解し、関わり方を探ろうとする事をあきらめない限り、その経過の先に『最適なケア』と『利用者の笑顔のある暮らし』があると信じています。
そして…今日も歯ブラシを持ってアプローチを続けていきます!
福祉を通して地域の方を
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